特集記事:北米キャンプ&アウトドアレポート2023サマリー Kampgrounds of America, Inc.

今回は、北米に多くのRVパークを展開するKampingrounds of America, Inc. 社(以下KOA社)の2023年のレポート、NORTHAMERICAN CAMPING & OUTDOOR HOSPITALITY REPORTについてかいつまんで解説をしていければと思います。このレポートは、KOA社が10年以上前から発行を始めたレポートで、北米のアウトドアシーンを理解するのに最適なものとなっています。

なお、

  • 本件はあくまで北米のカルチャーや風土が前提とあるため、日本から見て必ずしも共感できるわけではありませんが、とても面白い傾向が見えているので、ぜひ参考までに。
  • 発行の主体が第三者ではなくキャンプ・グランピング事業者である点は、忘れてはいけません(なので、ポジティブに捉えるバイアスがかかります)。内容を否定するものでもありませんが、念頭に置いておくことを推奨します。

レポートサマリー

  • アウトドアホスピタリティはレジャー旅行の重要な一部です。キャンプとグランピングはレジャー旅行市場にとって重要で、2022年に行われたすべてのレジャー旅行の32%を占めています。全体として、9200万の米国の世帯がキャンパーとして自己認識しています。
  • キャンパーやグランピング利用者は旅行時により多くのお金を使います。平均的に、キャンパーは前年比で1日あたり19ドルの旅行費用を追加で使いました。特にグランパーは、現地や現地での支出に1日あたり最も多くのお金を使います。合計で、キャンパーは昨年、地元のコミュニティに約520億ドル(約7兆2000億円)を支出したと推定されています。これは前年比で80億ドル(約1兆1000億円)の増加です。
  • 新たな体験への渇望がアウトドアホスピタリティを牽引しています。年々、キャンパーの約80%が、自分が未経験のキャンプの形を試しています。新しいことを試す欲求とキャンプやグランピング、アウトドアとつながる方法の多様性が、レジャー旅行者をアウトドアホスピタリティの選択肢にさらに結びつけています。2023年には、キャンパーの40%が日食や流星群のような自然のイベントを体験するために旅行したいと考えています。同様の割合(36%)の人々が、食の観光と料理体験を求めることが年間の優先事項であると述べています。
  • 経済が低迷していても、キャンプは優先事項です。すべてのキャンパーの半数が、経済的に厳しい時期でもキャンプはよりコスト効率の良い旅行方法を提供すると言っています。実際、全体の38%が、経済が悪化する場合でもキャンプを続け、他のタイプの休暇を少なくすると述べています。全体として、キャンパーの89%が他の旅行の選択肢と引き換えにキャンプ旅行を犠牲にすることはないと共有しています。
  • RV(レクリエーションビークル)所有者は経済的な低迷期にも彼らのRVをより頻繁に使用する計画を立てています。アウトドアの経済的な弾力性をさらに強化するために、RV所有者の半数以上(56%)が経済的な低迷の場合でも、RVをより頻繁に(33%)または同じ量(23%)使用するとしています。RVを好む1500万世帯とRV所有者約1200万人を抱えていることを考えると、2023年のRV旅行の見通しは引き続き強いと予想されます。
  • 感情的な健康と他者とのつながりはキャンパーにとって重要です。キャンパーとグランパーは、アウトドアが彼らにとって重要な精神的、家族的な利点をもたらすと言っています。家族と一緒に旅行してキャンプする人々は、キャンプがリラックスするのに役立ち、逃避を提供し、ストレスを吹き飛ばすのに役立つと言う比率が高いです。特にZ世代(1996-2012年に生まれた若い世代、2022年時点で10代から20代の若者)や最年少のキャンパーは、家族と一緒にアウトドアで過ごすことが重要で有益であると示しています。全体として、キャンパーの56%が次世代をキャンプとアウトドアに紹介することが重要であり、54%が家族の伝統に貢献していると述べています。
  • アウトドアホスピタリティにとってアクセシビリティは考慮事項です。キャンパーのほぼ3分の2が、特定の地域でキャンプする際の障害やキャンプをし辛くなる原因であると言っています。アウトドアホスピタリティで考慮するべき多くの種類のアクセシビリティがありますが、キャンパーの4人に1人が歩行や階段の昇降に少なくともある程度の困難を感じていることを示唆しています。しかし、レジャー旅行者の3分の1がキャンプを他のアウトドア活動よりもアクセシブルと考えることは注目に値します。

注目ポイント

日本との市場規模の違いと傾向

市場規模の観点からみると、日本のアウトドア市場はまだ成長途上と言えるでしょう。

米国で2022年の全レジャー旅行の32%をキャンプが占める一方、日本ではその比率は大幅に低い傾向が見られます。日本では国内旅行者数2億3千万人の内、キャンプ場の利用者は635万人(2022年旅行・観光消費動向調査)、つまり、約3%となります。これは比較対象国内旅行者数となっているため、一概には言えませんが、オートキャンプ白書での記載も2021年は余暇活動を行う人約7000万人のうち、300万人程度がオートキャンプをしており、比率としては小さいと言えるでしょう。

従って、日本でも、コロナ禍以降、国内旅行やアウトドアへの関心が高まりつつあり、今後の市場拡大が期待されていると言えるでしょう。

また、米国と日本では、キャンプの形態や楽しみ方にも違いがあります。例えば、米国ではキャンパーと自認している世帯が9,200万世帯にも上ります(世帯数は約1.3億、人口3.3億人)が、日本では『オートキャンプ白書2022』によると、2021年のオートキャンプ人口(1年間に1泊以上オートキャンプをした人の数)は750万人、オートキャンプ以外のスタイルを入れても1,000万人に届くか届かないかを考えると、まだまだキャンプ人口も割合も少ないのが現状です。 ここで敢えて言いたいのは、伸び代はすごいあるよ、という点です。

ホスピタリティへの注目

今回初めて、ホスピタリティという単語に深く触れられたように思います。これは、やはり明らかに、アウトドアに対してアメリカの人々の求めるものが変わってきていると言えるでしょう。日本においても、この傾向は進むと考えられ、実際、数年数年前まで高規格キャンプ場と呼ばれていたキャンプ場も、全体として高規格化が進んでしまい、差別化が難しくなったと感じています。今後はより、「人のホスピタリティ」に焦点が当たった戦略や、逆に、「完全に人との接触がないホスピタリティ(徹底的なDX推進)」の戦略が、身を結んできそうだと考えます。

また、アメリカでのキャンパーの旅行費用は前年比で1日あたり19ドル増加させたことから、現地での消費が増えていることもわかります。これはキャンプ地域の経済に対する大きな貢献であり、地元コミュニティへの約7兆2000億円の支出があったと、レポートでは言われています。これを日本の状況に照らすと、まだまだアウトドアの消費は米国に比べて小規模でしょうが、今後の市場の成長と共に地域活性化の一角を担うことが期待されます。

ウェルビーイングとキャンプ

アウトドア活動がメンタルヘルスに及ぼす影響についての研究は多く、キャンプがリラックスし、ストレスを解消し、逃避を提供するという声も高いです。ウェルビーイングという単語は、近年日本でも注目を集めている分野であり、自然の中に入ることと大きな関係があります。特に日本は都市部で生活をする人が多いため、その影響はアメリカなどよりも大きいことが想像されます。 また、面白い点として、Z世代や最年少のキャンパーは家族と一緒にアウトドアで過ごすことが重要で有益であると示しています。これは、アウトドアが新しい社会的な場として、また家族や友人とのコミュニケーションの場としての役割を果たしていることを示しています。

今後の方向性について

アメリカのアウトドア市場が示す動向を考えると、キャンパーの多様化やアウトドアへの需要の増加が見られます。また、若年層がキャンプを通じて自然と接する機会を求め、その中で社会的なつながりを深める傾向にあることも注目すべきです。これらは、日本のアウトドア市場にも重要な示唆を与え、今後の市場展開のヒントになります。 具体的には、このレポートの中でも、「新しいスタイルのキャンプに今年は挑戦したい」と8割の人が考えている点は、日本でも今後起こってくる事象です。しかし、現在の日本のキャンプ場でのほとんどは、各自がサイトで時間を過ごすことが中心で、それを深掘りしている様に見受けられます。いざ、**今のスタイルに飽きが来た時に我々はキャンパーの方々に何を提供することができるでしょうか?**みんなで考えられたら嬉しいポイントです。


注意点:文化や前提の違い

アメリカと日本のキャンプやアウトドアの楽しみ方の違いは、それぞれの国の文化や風土が大いに反映されています。レポートを読んでいくために、こういう前提があっての結論や報告かもしれない、というポイントとして、以下の仮説を挙げておきます。正解はわからないのですが、読者の皆さんには安易に鵜呑みにしたり、表面的な数字だけを見てもらいたくないため、注意喚起としての記載です。

  • 自動車文化が根強い、大きな道やカーフレンドリーな場所の数は多く、また自分で保有している車で旅をすることも一般的。
  • キャンプ場設備や衛生面での整備が日本ほど進んでおらず、その落差によるグランピング需要が根強い。
  • 働き方が異なり、まとまった休暇をとりやすい環境。日本は週末キャンパーが多い。
  • 元々日本よりも自然の中や田舎に住む人が多い(日本は人口の7割が都市部に住んでいる:令和2年国勢調査)。非日常としてのアウトドアである確率は低い。

主だった注目ポイントはこの通りです。

日本でも、特定の分野や商品ではなく、アウトドアの体験に焦点を当てた統計やレポートが出てくることを期待します。(むしろみんなで作りたい)



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